感染症 その種類
感染症とは
感染症とは、細菌・ウイルス・寄生虫などの病原体によって引き起こされる病気のことを言います。
病原体とは
病原体には、30ナノメートル(0.00003ミリメートル)という極小のウイルスから長さが10メートルほどにもなるサナダムシまで様々な病原体が存在しています。
病原体の種類
①ウイルス
②クラミジア
③リケッチア
④細菌
⑤真菌(カビ)
⑥原虫(原生動物)
⑦蠕虫(吸虫、条虫、線虫)
感染症の種類
一類感染症
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症。(原則として入院・隔離)
二類感染症
感染力、罹患した場合の重特性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症。(必要に応じて入院・隔離。食品製造等特定業務への就業制限)
三類感染症
感染力、罹患した場合の重特性等に基づく総合的な観点からみた危険性は高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症。(食品製造等特定業務への就業制限)
四類感染症
動物またはその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与える恐れのある感染症。(動物の輸入禁止、輸出検疫)
五類感染症
国が感染症発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を国民や医療関係者等の提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症。(発生動向の収集把握と情報の提供)
指定感染症
一〜三類に分類されない既知の感染症の中で、一〜三類に準じた対応が必要な感染症。
新感染症
1999年に施行された感染症法(感染症予防・医療法=感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で指定された未知の新しい感染症。新感染症は原因不明のため一〜五類には分類されないが、危険性が極めて高い新興感染症で、指定後は一類と同じ扱いとなる。
感染症別特徴
インフルエンザ[ウイルス]
【病原体】
インフルエンザウイルス
【潜伏期間】
1〜3日ほど(長い人は約一週間)
【種類】
①季節性インフルエンザ(A〜C型)②鳥インフルエンザ③新型インフルエンザ
【感染】
①季節性インフルエンザ
日本では冬場の11月頃〜翌4月頃まで流行する。人から人へ感染(主に飛沫感染)
②鳥インフルエンザ
水鳥から排泄物を介して他の鳥へ感染を広げていく。鶏などの家禽類が一部の鳥インフルエンザに感染すると短期間に高確率で死に至る。
また、2003年以降、人への感染も報告されており、発症した場合の致死率は約60%と非常に高くなっている(H5N1)。
20世紀に発生した3度の新型インフルエンザのパンデミックは全て鳥インフルエンザに由来している。
③新型インフルエンザ
人以外の動物の間で感染していたインフルエンザウイルスが人から人へ感染するように新型のウイルスによって感染していく。
【症状】
①季節性インフルエンザ
潜伏期間(2〜5日)後、38度以上の光熱を発し、頭痛・関節痛・筋肉痛・倦怠感・食欲不振などの症状が出る。
咳やくしゃみ等の呼吸器症状が続く特徴もある。
一般的には一週間程度で回復するが、乳幼児・高齢者・呼吸器や心臓などに持病のある者は重症化や死に至る場合もある。
②鳥インフルエンザ
多くの器官がダメージを受けるので重篤化することになる(多臓器不全など)。
繰り返しになるが、致死率は非常に高い。
【治療】
タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬
エボラ出血熱(エボラウイルス感染症)[ウイルス]
【病原体】
エボラウイルス
【潜伏期間】
2〜21日ほど
【種類】
①ザイール型②スーダン型③ブンディブギョ型④タイフォレスト型⑤レストン型
①ザイール型が最も病原性が強く、2014年から西アフリカで流行したエボラウイルスは①ザイール型に属するウイルス。
【感染】
最初は野生動物から人へ、その後人から人へ感染。
感染しても発熱などの発症が無ければ、人へ感染させることは無いとされている。
また、エボラウイルスは空気感染も無く、飛沫感染も容易にはしない。
傷口や粘膜にエボラウイルスに感染した体液などが接触したり、感染者の遺体に直接接触したりすると感染してしまう。
西アフリカの一部地域では、死者に触れて弔うという習慣があるので、感染が拡大する要因になってしまった。
【症状】
感染すると潜伏期間(2〜21日)後に発熱・頭痛・腹痛・嘔吐・下痢などの症状が出る。
死亡率が高く、地域によっては90%を超える。
【治療】
確立された治療法はまだ無く、ワクチン・抗ウイルス薬開発中。
麻疹(はしか)[ウイルス]
【病原体】
麻疹ウイルス
【潜伏期間】
10〜12日ほど
【感染】
感染力は非常に高く空気感染するので、マスクや手洗いだけでは予防できない。
【症状】
発症すると、高熱・咳・鼻水の症状が出る。その後、口の中にコプリック斑という白い斑点ができ、体中に赤い斑点ができる。日本での致死率は約0.1%と低い。
【治療】
確立された治療法は無く、対症療法(症状を改善する治療)のみ。
風疹[ウイルス]
【病原体】
風疹ウイルス
【潜伏期間】
2〜3週間ほど
【感染】
接触感染、飛沫感染、母から胎児への母子感染
【症状】
主な症状は、発熱・発疹・リンパ節の腫れ
【治療】
効果的な治療法は無い。
ノロウイルス感染症[ウイルス]
【病原体】
ノロウイルス
【潜伏期間】
1〜2日
【感染】
接触感染が主な感染経路になる。また嘔吐した時に出た飛沫による飛沫感染やウイルスを含んだ嘔吐物や排泄物が乾燥して空中を漂っているところを吸い込むことによって空気感染する例もある。
【症状】
主な症状は、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢(初期症状は、嘔吐と下痢)。
【治療】
特効薬などは無いため、整腸薬などの対症療法のみ。
エイズ(HIV)[ウイルス]正式名称:後天性免疫不全症候群
【病原体】
ヒト免疫不全ウイルス
【潜伏期間】
数ヶ月〜約10年
【感染】
性交(精液や膣分泌液など)、血液、母から胎児、麻薬中毒者の注射で感染(汗・唾液・尿では感染しない)
【症状】
発症後、免疫力が落ち日和見感染症により、肺炎・腸炎・脳炎・網膜炎など様々な症状が出る。
【治療】
HAART療法(複数の薬を用いてウイルス増殖を抑える療法、カクテル療法とも言う)により、死亡率は低下したが、ウイルスを完全に除去することは出来ないので、症状を進行させないためには、生涯薬を飲み続けなければならない。
ワクチンは無い。
エイズにワクチンが無い理由
・RNAウイルスは変異しやすく変異株には効果が無い
・ワクチンよりコンドームの方が低コストで有効性も高い
サルモネラ[細菌]
【病原体】
サルモネラ
【潜伏期間】
8時間〜4日ほど
【感染】
生卵、生肉
【症状】
腹痛、下痢、高熱、嘔吐(死に至る場合あり)
【治療】
下痢によって起こる脱水症状の解消、発熱・腹痛の緩和
結核[細菌]
【病原体】
結核菌
【潜伏期間】
半年〜2年ほど
【感染】
結核菌は乾燥に強く、空気中を漂い空気感染する
【症状】
発熱、咳、血痰、呼吸困難
【治療】
抗結核薬の長期服用(6ヶ月以上)
コレラ[細菌]
【病原体】
コレラ菌
【潜伏期間】
5日以内
【感染】
コレラ菌に汚染された飲料水から感染
【症状】
吐き気、嘔吐、下痢、腹部痙攣、筋肉痙攣
【治療】
軽症者は経口補水液、重傷者は点滴と抗生物質投与
MRSA敗血症[細菌]
【病原体】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
【潜伏期間】
1〜7日ほど
【感染】
接触感染(院内感染元凶として有名)
【症状】
発熱、病巣感染
【治療】
抗MRSA薬の点滴
ハンセン病[細菌]
【病原体】
らい菌
【潜伏期間】
約5年
【感染】
感染者との接触で感染すると思われていたが、現在では空気感染の可能性が高いと考えられている。
【症状】
潰瘍、乾燥、眉毛・まつ毛の抜け毛、しびれ、筋肉の衰弱、目の異常、皮膚の異常
【治療】
数種類の抗生物質の併用
ジフテリア[細菌]
【病原体】
ジフテリア菌
【潜伏期間】
2〜5日ほど
【感染】
感染者の咳や鼻水の飛沫を吸い込むことによる空気感染や感染者の粘膜に含まれる病原体に直接触れることによる接触感染
【症状】
衰弱、のどの痛み、発熱、頸部リンパ腺の腫れ、のど又は鼻に灰色の偽膜形成
【治療】
抗毒素療法及び抗生物質
赤痢[細菌]
【病原体】
細菌性赤痢:赤痢菌
アメーバ赤痢:赤痢アメーバ
【潜伏期間】
細菌性赤痢:1〜5日
アメーバ赤痢:2〜4週間(数日〜数年の場合もあり)
【感染】
病原体に汚染された食べ物・水から感染する。感染者の排泄物から感染する場合もある。
【症状】
発熱、悪寒、腹痛、血液・粘液・膿混じりの水様便
【治療】
細菌性赤痢は抗生物質、アメーバ赤痢は抗寄生虫薬
破傷風[細菌]
【病原体】
破傷風菌
【潜伏期間】
3〜21日
【感染】
傷口などから土の中などにいる破傷風菌が侵入して感染する
【症状】
開口障害、けいれん、呼吸困難、脳炎、自律神経異常
【治療】
傷口の洗浄、壊死した組織等の除去、破傷風トキソイド・抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤の使用、抗けいれん薬の投与
ペスト[細菌]
【病原体】
ペスト菌
【潜伏期間】
1〜7日
【感染】
ネズミなどのげっ歯類動物からノミを介して感染。空気感染や接触感染で人から人へ感染する場合もある。
【症状】
悪寒、吐き気、嘔吐、発熱、衰弱、全身筋肉痛、リンパ節の腫れ・痛み
【治療】
抗生物質投与と酸素吸入療法と点滴の併用
マラリア[原虫]
【病原体】
マラリア原虫
【潜伏期間】
1〜4週間ほど
【感染】
マラリア原虫を持ったメスのハマダラカに刺されることで感染
【症状】
発熱、発汗、悪寒、嘔吐、頭痛、倦怠感、筋肉痛、下痢
【治療】
原虫の種類などに応じた薬の投与
ウイルス感染によるガン
ガンには、ウイルス発ガンと化学発ガンがあり、ウイルスによって人がガンになることは決して少ないことではありません。
感染した細胞を「腫瘍原生ウイルス」と呼び、このウイルスが感染した人の体内で特定の細胞を選んで感染し、細胞増殖を刺激して腫瘍をつくる。
ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因となる子宮頸ガン、ピロリ菌を原因とする胃ガンがウイルス発ガンとして有名なところです。
※細菌やウイルスの画像はイメージです